超科学講座 講座1
ロボット

ロボットは、超光速航行とならんで「SFっぽさ」の代表的ネタです。昔から、どんなに設定がクズでもストーリーがカスでもこのふたつが出ればSF、みたいに言われて来ました。(機獣人と旅門開扉配列のあるアラベスクは、それでいうとSFになるのかもしれない……)
「人間と同じ様に動く機械人形」という考えは、その昔ギリシャ神話のころからありました。有名なのがかかとの栓をぬかれて倒された青銅の巨人、また、ヘーファイトスが作った「黄金の侍女」でしょう。
その機械人形に「ロボット」という名前をつけたのは、チェコのカレル・チャペックという人。自作の小説「R.U.R」(エル・ウー・エルと読むのさ)のなかで初めてこの単語を使っています。でも肝心の内容といえば、人間がロボットに滅ぼされてしまうというアンチ・ユートピアもの。
以来、「ロボット=人間に危害を加えるもの」というパターンができてしまいます。
そんな不遇なロボットたちの救い手がアイザック・アシモフとジョン・W・キャンベルJr.。キャンベルはアシモフの持ち込んだ新しいタイプのロボット小説から、「ロボット3原則」を考えつきます。そしてアシモフはその3原則をネタに次々と新しい作品を発表し、やがてロボットが人間とつきあうためには3原則はなくてはならないものになります。
ロボット3原則
1.ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、人間の危険を見過ごしてはいけない。
2.1に影響しない限り、ロボットは人間の命令に従わなくてはならない。
3.1、2に影響しない限り、ロボットは自分の身を守らなくてはならない。
3原則の普及により、ロボットはそれまでの「得体の知れない怪物」から「分析も理解も可能な機械」へと変わっていきます。それと同時にロボットは人間の敵ではなく、忠実なともになりました。まあ、ロボットと人間が戦うと大抵人間が負けるから、これは人間のためにもめでたいことなんですが。
でも、3原則はあくまで「原則」でしかありません。ので、ロボットやその製作者によって解釈はさまざまです。それに、3原則に忠実に従っていたのでは手に負えない問題もじつはたまにでてきたりします。例えば……
「Aという人間がBという人間を殺そうとしている。Bを救うにはAを殺すしかない」
……こんな時、ロボットはどうしたらいいでしょう?
ロボットは基本劇にまじめなので、3原則似ついて(別にそれ以外のことでもいいんですが)あまり悩ませると壊れることがあります。いくら人間らしく見えてもしょせん彼らは機械ですから、人間みたいに「いきあたりばったり」とか「そのうちなんとかなるだろう」とかはできません。ひとつの問題に突き当たるとそれこそプログラムに異常をきたすまで考えつづけます。
だから、あなたも隣にいるロボットを大事にしたいと思ったら、あまり無理難題はいわないように。ロボットって高いんだから。

参考資料
「われはロボット」「ロボットの時代」「鋼鉄都市」「夜明けのロボット」
いずれもアイザック・アシモフ著 ハヤカワSF文庫。ロボットものの基本の基本。
「究極超人あ〜る」全9巻
ゆうきまさみ著 小学館少年サンデーコミックス(ワイド版も刊行)。かつてここまで間抜けなロボットが存在しただろうか? それでも彼は3原則を守のだ。
「かれはロボット」
草上仁著 ハヤカワJA文庫『かれはロボット』収録。ロボットにセールスマンをさせるには……?
「ヴァーチャル・ガール」
エイミー・トムスン著 ハヤカワSF文庫。心優しい美少女ロボット、マギー。ストーリーはアナクロだが、設定は結構面白いかも。
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