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超科学講座 講座5
航路



 そういえば以前「流星航路」というスゴい短編を読んだことがあります。どのへんがスゴいかというと、流星群(ニュアンスからしてアステロイド群だと思うんですが……)に突っ込んだ宇宙船の窓の外を、流星が色とりどりの光を発しながら通り過ぎるのです。
 ……流星や隕石が発光するのは、大気との摩擦で燃え上がるからなんですが、この作家の宇宙には大気があるんだろうか??

 と話をふったところで、今回のネタはよく考えるとちょっと不思議な宇宙航路について語りましょう。
 空に航空機が飛ぶ航路があるように、宇宙にも宇宙船が飛ぶ航路というものはあります。混みあった地球の上ならともかく、なぜ無限に広がる大宇宙にまでそんなものが必要なんでしょうか? 答えは簡単。

1:宇宙船の安全のため
2:経済的な効率を考えて

 航空機でもそうですが、航路上を飛んでいる限り、その宇宙船の所在は常に確認されています。ですから何か事故や事件が発生しても、救助などの面ですぐに対応することができるのです。それに、航路そのものが宇宙空間の安全な所(近くに危険な恒星などがない、宇宙海賊などがでないなど)を選んで通っているため、安全度が高いのです。
 それに、経済的な理由も無視できません。宇宙船は結構コストのかかる乗り物ですから、特に自前で飛ばしてるような場合にはなるたけ効率のよいコースを選んで燃料などを節約しなくてはなりません。そうなるとどの船でも大体とる道筋は決まって来ます。そしてそこが「航路」として整備されていくわけです。

 宇宙航路は大きくわけて2種類あります。惑星系内航路と恒星間航路です。差がないようでいてこのふたつ、実は大きな差があります。
 まず惑星系内航路。ここの特徴は「狭い、混んでる、重力がたいへん」です。例えば我らが太陽系では、太陽からさいはての冥王星まで光速で数時間程度です。お隣のアルファ・ケンタウリまでは約4.3年かかるんで、これはずいぶん狭いということがわかります。
 こんな狭い中に9つの惑星、数百の衛星、数知れない小惑星がひしめいているんですからこれはもう大混雑です。障害物そのものはもちろん、重力の影響だって無視できません。
 従って惑星系内では、大抵の場合速度は光速以下に制限されます。さらに惑星などの動きを考慮して航路は複雑に、時間によって変化していくようになっています。所によっては惑星の重力を利用して進路や速度を変えたりするような航路もあるかもしれません。
 そして、事故防止のために規定や規則も相当厳しいはずです。
 対する恒星間航路。障害物はありませんし、重力の影響も惑星系内に比べてずっと小さくなります。そして、距離が桁違いに大きくなります。ちなみにクレギオンでは……あ、プレイングマニュアルの航路図に縮尺がない……。
 とにかく、恒星間では大抵の宇宙船は超光速航行をすることになります。作品によってタイプはいろいろありますがどうやら別の「空間」を通っていくことでこの世界での距離をかせぐというのが多いようです。この宇宙を飛ぶわけではありませんので、惑星系内のような緻密な航路は必要ありません。目的地に安全に、間違いなく着くための目安程度で充分でしょう。規定や規則もかなりゆるいか、あってなきごとしかもしれません。もっともその分覚悟が必要ですが。

 クレギオンでは、恒星間航行は空間の裂け目(ワームホール)を宇宙船が通り抜けることによって行われます。宇宙空間に無数に存在する裂け目を飛び石状に伝っていくわけです。そして、プローブを使ってこの裂け目を調査し、利用できるようデータとしてまとめた区域が「航路」です。早い話が航路の「外」というのは、調査がされていないので裂け目を利用できない空間のことです。ちなみにジャンプは航路内に既にある裂け目を利用した航行、フォールドは航路外で自力で裂け目を探して行う航行です。当然、自分で探す方がてまひまエネルギーがかかるので、できるのは限られた船ということになりますね。

 今回はちょっと難しいお話でした。次回はもう少し簡単にしたいなあ。


参考資料

「機長のかばん」
 石崎秀夫著 講談社。離陸から着陸まで、40年以上を空で過ごした元機長がわかりやすく解説。なまじなノウハウ本より面白い。

「航空通信入門」
 電気通信振興会著。航空通信の専門書。ちょっと難しいですが素人が理解できないほどではありません。こだわり派におすすめ。

「航空知識のABC」
 イカロスムック イカロス出版。こちらは初心者向け。航空一般についてのうんちく本。

〈航空宇宙軍史シリーズ〉
 谷甲州 ハヤカワJA文庫。恐らくは日本を代表する宇宙SF。文章力もさることながら、緻密で正確な考証はぜひお手本にしたいもの。

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